エディンバラ(スコットランド) – WORLD LIGHTING DISCOVERY

美しい中世の街並みが広がる城下町

エディンバラは、スコットランドの東岸に位置し、フォース湾に面する金融都市です。人口は46万人ほどで、古くから行政府・商業都市として栄えており、スコットランド地方の首都として政治と文化の中心となっています。旧市街を含むその美しい街並みは、ユネスコの世界文化遺産に登録されており、街の中心地にあるカールトン・ヒルからの360°に広がるその眺めに、訪れる観光客も思わず目を奪われます。

日本の国民的人気を誇るゲームとなった「ドラゴンクエストIII」の中にも、このエディンバラをモデルにした世界が登場します。私も子供の頃によく遊んでいたので、実際にこの場所に自ら足を踏み入れたときは、とても興奮しました。

私が住んでいたグラスゴーからは都市間バスで片道約40分程度。バス代も約£7(日本円で1000円程度)とそこまで高くないので、たまに遊びに出かけていました。よくグラスゴーとエディンバラは比較されることが多く、市民の間でも対抗意識があるようですが、この2つの都市を日本で例えるなら大阪と京都に近いかもしれません。近代的でファッションビルも数多い一方、どことなく下町の雰囲気が残るグラスゴーに対し、旧市街を中心に古都の情緒を感じるエディンバラ。同じスコットランドでもその雰囲気は全く異なります。


カールトン・ヒルから見渡すエディンバラの街並

街の中心の高台に浮かび上がるエディンバラ城

エディンバラの中心となる市街は大きく新市街と旧市街に分けられます。綺麗に区画整備された新市街とは対照的に、エディンバラ旧市街は高低差が激しく、道が複雑に入り組んでいます。そして、エディンバラ旧市街の高台にそびえるのが街のシンボルとも言えるエディンバラ城です。

エディンバラ城正門(11月の16時頃)

 

ライトアップで浮かび上がるエディンバラ城

 

写真は冬の11月頃に訪れた時のものですが、昼の14時頃からだんだんと暗くなり始めて、16時頃には闇が深くなっていきました。

エディンバラ城は、切り立った岩山にそびえ立っており、岩山周辺には何もありません。そのため、オレンジ色の暖かい光でライトアップされた城壁だけが下から柔らかく浮かび上がって見えてきます。

エディンバラ城のある高台から街を見下ろすと、街灯も光が上方へ広がらないように制御されていることに気付きます。もし、これが効率重視の全方向へ拡散するタイプの街灯だと、意図せずに岩山の山肌を照らしてしまい、せっかくのライトアップが台無しになってしまうのですが、ここではきちんと配慮がなされていました。建物個々にライトアップを考えるのではなく、街全体が周辺環境も合わせて取り組まなければ実現できないことだと思います。

ライトアップにはLEDの投光器が使われており、正面のファサードは、深い堀に設置された器具で下から全体を照らし上げていました。城壁が持つ歴史の中でエイジングされたテクスチャがいい味を出しています。全ての壁面に沿って正門には橋がかかっているため、純粋に正面下から照らすと橋が影になってしまうのですが、斜め前から複数台の光を重ね合わせることで、その暗がりを目立たないようにしていました。

城内の建物も同じようにLEDの投光器が使われていました。フィリップス製の器具のようですが、歴史的な建物であるため、城壁へダメージは最小限に抑える必要があり、レンガの隙間に金物を差し込み、そこにマウントするような設置方法をとっていました。ただ、観光客の手の届く位置にあり、カバー等もされていないので、調整ビスなどもきつく固定はしてあるのでしょうが、照射方向の定期的なメンテナンスが必要になりそうですね。

私が訪れたときは温かみのある電球色一色でしたが、街のシンボルとしてイベントがあるときには、カラーライティングやプロジェクションマッピング等により、煌びやかな表情を見せてくれるようです。

【Edinburgh Castle – Castle of Light】
https://www.edinburghcastle.scot/whats-on/castle-of-light


お城の周辺道路の街路灯は下方向へ光をきちんと制御

 

堀の中に設置されたエディンバラ城を照らす照明機器

 

城内に設置された照明機器

訪れる人を楽しませる、街を彩る装飾の光

私がエディンバラを訪れたときには、ちょうどChristmas Light Nightというイベントが新市街の中央通りであるジョージ・ストリートで行われていました。毎年、11月の第二日曜日に、クリスマスシーズンの幕開けを告げる行事として行われているようです。ライトアップをメインとしたイベントというよりは、ゲストによるパフォーマンスや大音量の音楽とともに、クリスマスの前祝いのような雰囲気で盛り上がるためのイベントですが、たくさんの人に混じって市内を歩きまわると、様々な光に出会うことが出来ました。

光の装飾で彩られる元銀行を改装したレストラン

 

窓一面に大きな映像が流れるメディアファサード

 

街頭で見かけたクールなディスプレイ

ジョージ・ストリート沿いで一際目を引くのが「The dome」です。ここは1847年にスコットランド商業銀行の本部として建てられたものですが、現在はナイトクラブ、レストラン・バーとして使われています。

観光客にも現地の人にも人気のお店で、残念ながらクリスマスの繁忙期のため中には入れませんでしたが、美味しい食事と優雅で豪華な内装を楽しむことが出来るそうです。クリスマスシーズンになると、写真のような装飾が施され、道行く人々の目を楽しませてくれます。

【The dome】
https://www.thedomeedinburgh.com/


Hollisterのファサードは、映像パネルを窓の内側に設置し、海や空が建物から溢れて見えるような演出がされており、非常にインパクトがありました。他にも、工夫を凝らしたショーウィンドウが街のいたるところでディスプレイされていて、正に「ウインドウショッピング」という言葉の通り、何も買わずとも街を歩くだけで楽しい気分にさせてくれます。

今はネットショッピングで安く商品が変えてしまう時代。日本でも百貨店などの小売業の厳しい環境が続く昨今、ショーウインドウの役割も変わりつつあるのかもしれませんが、こうしたディスプレイひとつひとつからこもれ出る光が、街の賑わいを作り出しているという側面を忘れてはならないと思いました。

クリスマスシーズンの人手に合わせて、ヨーロッパのあちこちでクリスマスマーケットや、移動遊園地、スケートを楽しむ姿をよく見かけます。エディンバラも例外ではなく、夜が長く寒い冬は気持ちも暗くなりがちですが、こういった数々のイベントはそれを吹き飛ばすかのように楽しく過ごすための工夫のひとつなのかもしれません。



移動遊園地の煌びやかな光

 

公園内の仮設のリンクでスケートを楽しむ人々