レイキャビク(アイスランド) – WORLD LIGHTING DISCOVERY
アイスランド観光の拠点となる世界最北の首都
レイキャビクはアイスランドの首都で、首都としては世界最北の北緯64.8度に位置しています。人口は首都圏全体で約21万人で、国全体の3分の2の人口がここに集中しており、アイスランド観光の拠点として、数多くのホテルや飲食店がこの場所に集まっています。
アイスランドは、全人口30万人前後と小さな国ながら、国民一人当たりのGDPは高く、国際競争力も優れています。アイスランドの基幹産業は漁業で、古くからタラ、シシャモなどの輸出が国の発展と成長を担ってきました。一時は、金融業が国の中心産業に代わろうとしていましたが、リーマンショックが起こった2008年の世界金融危機では債務不履行(デフォルト)が起こり、アイスランドクローネが暴落して国民の生活に大きな影響が出ました。
しかし、暴落したクローネが幸いして、水産物などの輸出産業が急回復を果たすととも、通貨安が観光業に大きな恩恵をもたらし、以後は他のEU諸国と比べても高い経済成長率を誇っています。
アイスランドへ行くために利用できる航空会社はあまり多くありません。しかし、どうせ行くならアイスランド航空をお勧めします。全ての便ではないのですが、運が良いと、写真のようなオーロラ仕様の機体に乗ることが出来るからです。このオーロラの間接照明は固定色ではなく、ひとつひとつ色を制御できるカラー照明を使っていて、オーロラのように光の色が変わる仕掛けになっています。大きな飛行機ではありませんが、世界でここだけでしか出来ない経験です!
【Icelandair – Have you seen inside the world’s first northern lights plane?】
https://www.youtube.com/watch?v=iocTGyU33CM
ケフラヴィーク国際空港に降り立ち、高速バスで1時間程揺られると、湾岸沿いに栄えたレイキャビクの街に到着します。
レイキャビクを初めて訪れたのは1月の真冬でした。「アイスランド」という名前から極寒の地を想像してしまいますが、北大西洋海流や南から来る偏西風によって、冬は非常に温暖な地域となっており、気温は0℃前後と意外と温かいです。地域によっては-20℃に達する北海道の方が断然寒いですね。一方、夏の気温は上がりにくく、最も暖かい8月平均で10℃を少し超える程度のようです。
派手さはないが、そっと浮かび上がる街のモニュメント
到着して早々に、レイキャビクの街を夜に歩いて探索したのですが、やはり他のヨーロッパの国に比べて安心感があります。というのも、夜の街を歩いて写真を撮るということは、そう簡単なことではないからです。日本ではそう危険に感じることはありませんが、ヨーロッパをはじめとする外国では、常に強盗・窃盗等のリスクがつきまといます。レイキャビクは、治安の良い街として常にランキングの上位に選ばれることが多いだけあり、実際に夜遅くにひとりで歩いていても、危険を感じるようなことはありませんでした。
レイキャビクの中央の丘には、街のランドマークとも言えるハットリグリムス教会があります。装飾が施された豪華絢爛な建築の権威ある教会の雰囲気とは違い、溶岩の玄武岩をモチーフにした表現主義の建築であるこの教会は、アイスランドでは最も高い建造物となっています。頂点には展望台スペースがあり、有料ですが、レイキャビク市街も一望できます。
照明は、一部の放電灯が不点となっていることと光ムラがやや気になりますが、床に埋め込まれたバリードライドが縦に伸びる直線のテクスチャを強調しており、遠くから教会を見たときには、丘の上で建物が柔らかく浮かび上がっていました。
教会内部には、昼の短い時間帯しか入れないので改めて訪れてみると、シャンデリアやスポットライト等は一切なく、窓から差し込む自然光が室内全体を柔らかく包み込んでいました。実際に足を踏み入れてみたとき感じた、人工の光に頼らず、自然のままに受け入れる建築の雰囲気が、私は素直に好きでした。
海岸沿いの遊歩道には、サン・ボイジャー(Sun Voyager)という有名なアート作品があります。直訳すると「太陽の航海者」という意味です。アイスランドと言えばバイキングですが、そのバイキング船をかたどった近代アートで、レイキャビク200周年のモニュメントとして、市内で最も人気のあるスポットのひとつとなっています。というのも、ステンレススチールで出来ているそのボディに空や海が映り込むため、明け方や夕方にはオレンジ色に染まった陽の光をその身にまとって美しいのだとか。
夜に訪れてみるとさすがに人はいません(笑)ということで、ひとりで自由に研究し放題です。照明器具はモニュメント横に白色の放電灯スポットライトがただひとつあるだけ。その場ではその意図がよくわかりませんでした。しかし、写真を撮ってみると、街路灯のナトリウムランプの光を反射して黄金色に染まって浮かびあがっており、その差し色としてこの白色の光がいい味を出していました。つい照明器具を足してしまいそうですが、周囲の光を取り込み、白色のスポットライトをアクセントとして加えるだけのシンプルな手法で、十分効果的に魅力を引き出している光の演出だと思いました。
もっと欲を言えば、今はLED化により、細かい光の制御や小型化が進んでいるので、床や構造物に無駄な光を当てずに、対象物のみに当て込めればさらに良いかもしれませんね。
また、海岸沿いには多くのマンションが立ち並んでいました。オランダと同様にカーテンを閉めない住戸がたくさんあることに気付きます。これでは外から生活の様子が見えてしまいますが、対面は海となっているため、そんなことはあまり気にしなくても良いのかもしれません。それよりも陽の光や、夕焼け空、オーロラが見える景色を室内空間に取り込む方が何倍も価値があるかもしれませんね。自分の部屋から雄大な自然の光を楽しむことができるなんて、とても贅沢ですね。
光の巨匠が生み出した、自然光と空間が織り成すアイスランドの建築
もうひとつレイキャビクで有名な建築物が「ハルパ・コンサートホール&カンファレンスセンター(Harpa Concert Hall & Conference Center)」です。アイスランドでよく見かけることのできるバサルト・ロック(柱状玄武岩)をモチーフにした特徴的なガラスのファサードを持つこの建築は、2011年にデンマークの国際的建築家ヘニング・ラーセンによって設計されました。
ヘニング・ラーセンは「光の巨匠」と呼ばれており、天井や窓から降り注ぐ自然光が床や壁に反射して空間を包むよう、周到に計算された光と空間が織り成す建築の数々は世界的にも高く評価されています。
ガラスファサードは、正面がアイアンフレームによって構成される四角柱の格子によって凸凹のあるテクスチャを持っているのに対し、側面の壁はフラットに一面ガラス張りとなっていました。また、よく見ると色ガラスがランダムに設置されていることにも気付きます。ガラスだけでももちろん反射はするのですが、その多くは室内に透過してしまうのに対し、色ガラスでは一部の光のスペクトルを強く反射します。この建築は、陽の光が当たったときにその光を一様に反射させるのではなく、クリスタルの表面が煌めくときのように、光が内部で屈折し、色彩を帯びて反射する様子を表現しているわけです。
このガラスファサードは、時間とともにその見え方も変化させていきます。澄み渡った青空だけでなく、夕方になれば、時間とともに赤、橙、黄、紫などの色彩に変化する空の色を取り込んで自身もその色に染まっていきます。まさに、大自然の持つ美しさと上手く融合させた建築と言えます。
夜になると、室内からの照明が外へ広がる大きなライトボックスへと変わります。アイアンフレームの側面には、カラーライティングが設置されていて、氷の表面に光が当たったときに見える反射光のような動きをするメディアファサードとなっています。
室内の照明で特に印象的だったのは、ハニカム構造の天井面です。写真では天井面が光っているように見えますが、これは明るく照らされた床面の高い輝度が鏡面のテクスチャに映り込んで見えているからです。一部のハニカムには真下に向けられたスポットライトが設置されていて、これが強い明るさ感を作り出しています。天井を明るく見せるために床を照らすという、一見相反したような方法ですが、理にかなった面白い光のマジックでした。
日本の常識とは異なる空の移り変わり
レイキャビク市内自体はそう大きくはないので、通常はレイキャビク周辺にある観光地をバスツアーに参加して見て回るか、レンタカーを借りて、レイキャビクを拠点にしながら観光するのが一般的です。私も市内を散策してひと段落したあとに、いくつかのツアーに参加しました。
1月のレイキャビクはとにかく暗いです。グラスゴーに住んでいたときも日本との差に驚きましたが、アイスランドはさらに顕著になって現れていました。朝8時を過ぎてるのに、キャンドルの灯だけの暗い朝ごはんは、なかなか出来ない貴重な経験です。
ツアーが始まると、へトリスヘイジ地熱発電所やゲイシール間欠泉、グトルフォスの滝など、レイキャビク周辺の大自然のパワーを感じる場所へ次々と案内されていきます。
バスに揺られている時間も結構長いのですが、外を眺めていても、なかなか空が明るくなりません。結局、明るくなり始めるのが朝11時になろうかという時間で、最も太陽が高い位置に来ても、日本の夕方の時間帯のような雰囲気。14時にはもう陽が沈み始めます。明るい時間はあっという間に過ぎ去っていきます。ここまで陽の光が少ないと、当たり前のことが当たり前ではないということを知って、改めて太陽の存在のありがたみを感じますね。
また、アイスランドは天候の移り変わりが激しく、晴れ渡った青空から、薄く雲がかかって拡散する陽光、吹雪の中のホワイトアウトまで、様々な自然の光の美しさを見ることが出来ました。
アイスランドと言えばオーロラ!狙うなら秋に行くべき!
ツアーが終わって夜になると、次はいよいよオーロラツアーです!参加費は、ツアーのグレードにも寄りますが4,000円~10,000円程度で、8月~4月くらいまで毎日行われています。オーロラは本当に気まぐれなので、1度目のツアーで見れなかった場合は、滞在中見られるまで同じツアーに無料で何度も挑戦することが出来ます。
ちなみに、1月はあまりお勧めしません。というのも、1月は厚い雲に覆われていて、天候が悪いことが多く、せっかくオーロラが上空に出ていても見えないことがほとんどだからです。ホテルのレセプションの人もオーロラ見るのにこの時期は向かないよと言っていました。
また、オーロラは太陽風のプラズマ粒子が大気中の酸素や窒素に高速でぶつかることで発光します。そのため、天候だけでなく、宇宙からの太陽風の強さや地球の磁場の強さによっても左右されます。空がすっかり晴れわたっていても、全ての条件が揃わないと見ることが出来ない、偶然の産物なのです。
【Aurora Forecast for Iceland】
https://en.vedur.is/weather/forecasts/aurora/
天候不順などに何度も阻まれ、1度目の滞在の5日間で、結局オーロラを見ることは出来ませんでした。諦めがつかずに再度9月に改めて挑戦したときの写真が下です。通常のオーロラは、うっすら見える程度の明るさしかないのですが、このときはオーロラ予報でも強度6を示していて、このオーロラが出たときはあたりアイスランドの大地一面が明るくなって見えるほどでした。
まさに光のカーテンという表現が相応しく、薄い光が上空でゆらゆら揺れながら変化していきます。自然界に存在する緑色の光でここまでダイナミックなものは見たことがなく、このオーロラを目にしたときは本当に感動的でした。ちなみに、9月はそこまで寒くないので、長時間外にいてもそこまで苦にならず、オーロラ観測にはおススメの時期です。
アイスランドにはここでは語りつくせない程、まだまだたくさんの魅力があります。もうすでに3回アイスランドを訪れていますが、近いうちにまた行くことができるよう計画中です。今回はレイキャビクでしたが、機会があれば、また違う角度からアイスランドについてレポートしてみたいと思います。